『20センチュリー・ウーマン』に関する覚書
今年ベストクラスの映画です。気になったところでまとまりそうなところを箇条書きで。「20センチュリー・ウーマン」予告編海(辺)と土と空上が『20センチュリー・ウーマン』の、下が『ザ・マスター』のファーストカット。『20センチュリー・ウーマン』は波打つ海を直下に眺めたショットからはじまる。ここでわたしたちはポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』をひきあいに「ファーストカットが波打つ海な映画は大...
View Article1930年代から2000年代までの各10年ごとの映画ベスト10
はじめに 他人がなんか楽しくワイワイしながら盛り上がってるさまを眺めるのはとてもくやしいものです。わたしだってワイワイしたい。 最近の twitterでのワイワイ案件としては「◯◯年代映画ベスト10」があります。年代ごとにベストな映画を10本挙げるとかいうやつです。それをここでやります。やりたくなるまでお気持ちの変遷については省きます。 ちなみに...
View Article2017年上半期の映画ベスト20とベストな犬
トップテン1.『20センチュリー・ウーマン』(マイク・ミルズ監督、アメリカ)2.『お嬢さん』(パク・チャヌク監督、韓国)3.『夜は短し歩けよ乙女』(湯浅政明監督、日本)4.『哭声/コクソン』(ナ・ホンジン監督、韓国)5.『アイ・イン・ザ・スカイ』(ギャビン・フッド監督、イギリス)6.『美しい星』(吉田大八監督、日本)7.『グリーン・ルーム』(ジェレミー・ソルニエ監督、アメリカ)8.『沈黙/サイレンス...
View ArticleBrigsby Bear、ならびに監禁映画と毒親マンガの流行
今観たい映画ナンバーワン wikipediaに載っているあらすじをそのまま訳すと以下のようになる。 ジェイムズ・ポープは赤ん坊のころに病院から誘拐され、以来子供時代から大人になるまでずっと地下シェルターで『ブリグズビー・ベアー』以外のことを一切知らずに生きてきた。『ブリグズビー・ベアー』とは両親になりかわった誘拐犯夫婦によって制作された架空の子供向けTVショーのことだ。...
View Article『ジョン・ウィック:チャプター2』について:ギリシャ神話・背中・亡霊・犬
『ジョン・ウィック:チャプター2』("John Wick: Chapter 2"、チャド・スタエルスキ監督)『ジョン・ウィック:チャプター2』予告編 #John Wick: Chapter 2(以下は『ジョン・ウィック2』を既に観た人向けの完全にネタバレなやつです。 まだ観てない人は、7月21日現在そろそろマジで上映が終わりそうなので、 映画館で今すぐ『ジョン・ウィック2』を観ましょう)強いオルフェ...
View Article「なぜあなたはFGOのガチャを回すのですか」
不自然な弁明ではなく、解明すること。これが与えられた使命である。 ――シュテファン・ツヴァイク、『マリー・アントワネット』(下巻、角川文庫、中野京子・訳) 一度羽生に訊ねたことがある。 なぜFGOをやるんですか、と。 羽生がなかなか答えないので、きまずくなって質問をつけ足した。「マロリーとおなじ理由ですか」...
View ArticleBaby, Please Drive me. ――『ベイビー・ドライバー』の感想
(Baby Driver, エドガー・ライト監督, 2017, 米) 音楽が鳴っているあいだはきみも音楽。 ――T・S・エリオット*1 パンフレットにも載ってある「カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』」という惹句に尽きる。ミュージカル的な快楽の点ではララを越えてさえいるのかもしれない。 思えば常にエドガー・ライトの映画は音楽と共にあった。いまさら、『ショーン・オブ・ザ・デッド』でクイーンの「Don’t...
View Article奔るゾンビ映画――『新感染 ファイナル・エクスプレス』の感想
(原題:부산행、ヨン・サンホ監督、2016、韓国)「新感染 ファイナル・エクスプレス」予告編走る列車、トレインするゾンビ 感染が拡がる、まるで新幹線の速さで。...
View Article私たちは悪魔と取引してデザインされた死を遊んでいる
『ゆゆ式』を思い出そう。『終末少女旅行』を思い出そう。 あなたはいつだって、「この問題」を無敵の少女たちに押しつけてきた。 その罰として、あなたは今、悪魔と契約したコップに成り果てている。 Cuphead Launch Trailer 人生では一回しか体験できず、ゲームでは何度でも味わえるものの一つに死がある。...
View Article私はゲームと書き物がへただ。
颱風がいくつか北大路通を過ぎて死の季節を開いたようだった十一月、ようするに寒い。両手足のゆびさきが絶妙に冷える。毎朝なじみのゴミ捨て場ずまいのネコも早朝からどこかへと失せるようになって、他人の犬たちの毛も増えた。大きい犬ばかりだ。散歩に出るのは。...
View Article文学フリマで読んだ本。
11月の東京文学フリマで買っ(てきてもらっ)た本を読み終わったので、感想など。評論系がほとんどです。東京大学お茶の会『月猫通り 2158号(特集:ショートアニメ)』 友人が寄稿していたので入手。 気がついたらなんとなく増殖してたショートアニメの歴史と位置づけを問い直す意欲的な特集。こういう気がついたらあったものを真剣に論じようぜ的なフロンティア・スピリットは大事ですね。...
View Article新潮クレスト・ブックス全レビュー〈8〉:『ハイウェイとゴミ溜め』ジュノ・ディアス
『ハイウェイとゴミ溜め』(Drown、ジュノ・ディアス、江口研一・訳、1996→1998)ハイウェイとゴミ溜め 新潮クレストブックス作者:ジュノディアズ,Junot D´iaz,江口研一出版社/メーカー:新潮社発売日: 1998/07/01メディア:単行本購入: 2人 クリック: 35回この商品を含むブログ (14件) を見る...
View Articleケネス・ブラナー版『オリエント急行殺人事件』について
『オリエント急行殺人事件』*1の映像化と呼ばれる作品は世界にだいたい五つくらいありまして、ここではシドニー・ルメット監督&アルバート・フィニー主演版(映画、1974年、以下「ルメット版」)、フィリップ・マーティン監督*2&デイヴィッド・スーシェ版(TVシリーズ、2010年、以下「スーシェ版」)、そしてケネス・ブラナー監督主演版(映画、2017年、以下「ブラナー版」)を扱います。...
View Article『おそ松さん』2期OP曲=『スター・ウォーズ:最後のジェダイ』説
前回までのあらすじ 引っ越しの準備で映画を観ている時間がない。君子危うくも最後のジェダイ 「君氏危うくも近うよれ」を朝から晩まで聴いています。『おそ松さん』二期のオープニング・ソングです。この曲を十回、二十回、三百四十二回、千九十六回、とヘビイにリピートしていくうち、宇宙に関する真理を少しずつ悟っていきます。...
View Articleユーゴ紛争について触れずにクストリッツァを語ることは可能だろうか。:『オン・ザ・ミルキーロード』感想
(On the Milkyroad, エミール・クストリッツァ監督、セルビア、2017)*注意:オチまでネタを割っています。 男は厩舎で女と邂逅する。ぎこちなく、けれど自然に数語がやりとりされる。 男は言う。「僕の名はコスタ。きみは誰だ?」...
View Article人類が存続を保証すべき2017年の新作連載マンガ72選
神獣楽天庭国カドカワにて*1あけましておめでとうございます、あたらしきマスター。連載継続保障機関ヨムデアにようこそ。あなたの着任を歓迎します。さて2017年、われわれは許されざる人道上の大罪を二つ犯しました。ひとつは『ルポルタージュ』(作・売野機子)の打ち切り。もうひとつは『四ツ谷十三式新世界遭難実験』(作・有馬慎太郎)の打ち切りです。どちらも最高級のマンガ作品です。将来を嘱望された名作です。やがて...
View Article「『スリー・ビルボード』は本当にフラナリー・オコナーなの?」を考える。
『善人はなかなかいない』を読む人フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫)作者:フラナリーオコナー,Flannery O'Connor,横山貞子出版社/メーカー:筑摩書房発売日: 2009/03/10メディア:文庫購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (16件) を見るフラナリー・オコナー全短篇〈下〉 (ちくま文庫)作者:フラナリーオコナー,Flannery...
View Article二月に読んでおもしろかった新刊マンガまとめ
これまでのあらすじ完結情報(不完全版)今月の十選『あんたさぁ、』(ルネッサンス吉田、単発長編、ビッグコミックスペシャル)『いざなうもの』(谷口ジロー、短編集、ビッグコミックスペシャル)『ヴラド・ドラクラ』1巻(大窪晶与、ハルタコミックス)『とんがり帽子のアトリエ』3巻(白浜鴎、モーニングコミックス)『骸積みのボルテ』1巻(まつだこうた、バーズコミックス)『BEAST...
View Article『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』の短いレビュー
(Killing of a Sacred Deer、ヨルゴス・ランティモス監督、英&アイルランド、2017)...
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