基本的に iTunesで販売・レンタルされている映画に書かれているあらすじはきちんとしている。
どこの馬の骨とも知れないやつが無償であらすじを書く Wikipediaや見放題パックで売りっぱなしの Netflix などとは違って、映画会社もアップルもカネとるために売ってるのだから、すこしでも客のハートにひっかかるように努力するのはあたりまえの話だ。
ところがそんな iTunesにあってさえ、よくわからないあらすじが時たま混入してくる。変なあらすじには iTunesにかぎらず、だいたいのパターンがある。あらすじとして情報量が足りないか、やたらポエムみたいか、変にネタバレしてるか、妙に自信が欠けている*1か、そもそも作品自体の内容がおかしいか、この五つのいずれかだ。
いくつか例を見てみましょう。
情報量が足りない型
・あらすじとは、一般的に映画のプロットや要点を紹介するものだと思われている。ところが天と地の間には読んでいてプロットも要点もわからないあらすじが多々存在するのである。
本の紹介にしかなってない。*2
元カノの人工授精を手伝ったところはまではわかるが、そこからセックスしてなんで「なんと二人とも妊娠することに」なるのか。人工授精後に女性器同士をすりつけあってるともう片方も妊娠したってことなのだろうか。そういうことってあるのか。
どうやら映画内映画と(映画内の)現実の二つのレイヤーがある系の作品らしいけれど、その二つのレイヤーをフラットにあらすじっているためなんだかよくわからない説明に。
ポエム型
・とはいえ、iTunesにおけるあらすじは「解説」と称されており、それを狭い意味で受け取れば必ずしも紹介する側にあらすじを述べる義務は生じない。しかし、世の中には「解説」すら拒否したもっと禍々しい紹介文もある。それがポエムあらすじだ。
三池崇史の『IZO』を彷彿とさせるサムライ・ワイドスクリーン・バロック感。それにしても宮本武蔵がサムライなのは当然として、なぜヤクザ。
本気で何言ってるのかわからない。
ネタバレ型
・あらすじというのは存在そのものがネタバレ性を孕んでいる。といっても物事には限度があるわけで、その間合いを見誤ると大変なことになる。
ミステリーであるにも関わらず、解決しないことをあらかじめ謳って売りつける親切かつ斬新な商法。
自信がない型
・映画を紹介するときの常套句として「この作品はきっとあなたを〜だろう」というフレーズがあるわけだけれど、これの使いどころや文脈を間違えると単なる自信のない人と化してしまう。特に、長々とあらすじを語った最後の一文でぶちこむと唐突感とあいまってかなり危険。日本語ってむつかしいね。
ソフトを販売する側でありながらも、TSUTAYAやタワレコほどのフランクさを見せない iTunesの立場の微妙さが伺える。
あらすじのあとにワンクッション置いてるため比較的軽傷。とはいえ、もっと自信をもって感動の渦に巻きこんで欲しい。
一番危険なパターン。「最高に面白い」と言っておいて最後に「だろう」をつける竜頭蛇尾っぷりが不必要なまでに不安を煽りまくる。
狙ってる/そもそも作品が狂ってる型
これ系はあげればキリがないんじゃないかと思われそうだけれど、意外とイカれたコメディのあらすじを真面目に詳らかにしている作品って少ないんですよね。ポエム型と親和性を持ちます。
あらすじを読んでいるだけで幸せな気分になれるけれど、実際に観てみてもそれ以上の幸福はもたらされないんだろうなあ、という気もする。
ノリノリすぎ。
比喩ではなく、生産性のないやつは本当に爆発します。
処女懐胎はジャンルとしての開拓の可能性に溢れていることを示唆してくれる一本。
一番最後の「狙ってる型」を除く雑なあらすじに共通するのは、受け手とのコミュニケーションを絶対的に拒否しているところであって、書く方にはもうちょっとまじめにがんばってほしいし、アップルもアップルでちゃんとチェックしてほしいところなんだけれども、まあ、みんな大変だろうし、ほどほどにやってくれればいいよ。