オープニングソング「サウスパークを観るのうた」
(オ〜オ〜オ〜〜〜)
ネトフリにサウスパークが やってきた(やってきた)
サウスパークを観よう
サウスパークを観よう
チャンネルまわせば顔なじみ
どこかで見たおぼえはあるけれど
実際に視聴したことはなかったね
サウスパークを観よう
サウスパークを観よう
十回に一回はドンで引く
コミケに行くな サウスパークを観ろ
コミケに行くな サウスパークを観ろ
今夜は合法だ
これまでのあらすじ
現代の怒れる神、ネットフリックスはそのときどきの気まぐれで想像もしなかったコンテンツを追加したり、永遠とも思えた番組を予告なく消去することがあります。
そんなネトフリからの十二月最大の贈り物といえば『サウス・パーク』。シーズン15(2011年)〜21(2017年)までが現在絶賛配信中です。
しかし開始して十五年経過した作品にいきなり入るのも難易度が高い。こち亀でいえば、70巻代から読み出すようなものです。意外とハードル低くないか? なんかいきなりシーズン15から観出しても大丈夫な気がしてきた。
ウオーッ
おれたちはシーズン15からサウスパークを観るぞッ!!
番組の主な登場人物
・どこから始めても、だいたい観てて五分くらいで主要メンツのポジションを把握できる。
青いニット帽(スタン):劇中ではよく常識人ヅラしてデブを説教したりしているが、行動だけ見ればこいつも大概である。
緑の帽子(カイル):ニット帽とあまり見分けがつかない。演説が巧い。カナダ生まれの弟(養子)がいる。
デブ(カートマン):劇中随一の悪役。
オレンジのジャンパー(ケニー):昔はよく死んでいたらしいけれど、今はただの無口なガキ。
金髪のチビ(バターズ):かわいそうだね?
オススメ入門用エピソード十選
s15ep1 「ムカデ人間パッド(HumancentiPad)」
iTunesのアップデート後の規約をよく読まずに同意してしまったために、緑の帽子がスティーブ・ジョブズに拉致され、新型 iPadであるムカデ人間パッドの実験台にされてしまう。ちなみにムカデ人間パッドとはカルト映画『ムカデ人間』に出てくるムカデ人間(人間の口を別の人間の肛門に縫い合わせて作る夢の生命体)に iPadを取り付けただけの目を疑うお下劣な製品です。
シーズン15の第1話にして、時事ネタ、カルチャーネタ、下ネタ、グロネタ、ウンコネタ、有名人・ブランドいじり、カートマンの人格破綻っぷりと以降の『サウスパーク』のエッセンスが詰まった入門編のようなお話です。まずはこれを観て、自分と『サウスパーク』の相性を確かめましょう。合わなかったらお気の毒。
s15ep7「立派な大人(You're Getting Old)」
思春期を迎えて観るもの聴くものすべてがクソ(比喩ではなくマジで人の口からウンコが出てくる)に思えてくるようになったスタン。口をつけば厭世めいたセリフしか出てこない彼に友人たちはうんざりしはじめ……というお話。
英語圏では思春期少年少女の苦闘を描いたドラマを「カミングエイジもの」と呼びまして、本エピソードはまさにその傑作。無限に湧き出るウンコを通じて思春期の痛切な揺らぎをえぐり出す物語は、マジックソリアリズムともいうべきか。言わなくても良い気がしますが。
永遠の小学生たちの楽園であるサウスパークでは「成長」という切り札を切れる機会は少ないわけですが、使うときは効果的に使い潰してきます。
ウンコネタだったらep8の「ケツバーガー」も必見。
s15ep5「クラックベイビー選手権(Crack Baby Athletic Association)」
資本主義に手厳しい『サウスパーク』中でもスポーツ産業風刺は度々大きなパートを占めます。
この話でも、コカイン中毒の赤ちゃんにコカインのボールをもてあそばせるスポーツで一儲けしようと企むカートマンが相談先としてコロラド大学が登場。
カートマンは大学の学長に対して「おたくのスポーツチームみたいに『奴隷』を上手く扱う方法を教えてほしいんだけど」ともちかけます。大学スポーツをビジネス化する風潮への皮肉ですね。
他にもスポーツゲームで有名なEAスポーツ社にハメられりたりと、様々なプレイヤーから食い物にされているスポーツ業界の現状が浮き彫りにされていきます。
そういうお勉強になりつつも、むちゃくちゃなスポーツを考案してメイクマネーしていくカートマンのハスラーっぷりも痛快です。
s16ep11「バターズ故郷へ帰る(Going Native)」
もちろん人種差別ネタも『サウスパーク』におけるコアの一つ。
わけても本エピソードはポスト-ポストコロニアル文学の領域に達した傑作といえるでしょう。
なぜだか急にキレやすくなっていたバターズはあるとき、両親から一家の出自の秘密を告げられます。
「バターズ、実は私たちはネイティブ・ハワイアンなんだ。一定に年齢に達したお前はふるさとへ帰ってハワイの伝統に則った成人の儀式を行わないといけない……」
ちなみにバターズもその両親も思いっきり白人。ハワイ人の血が混じっているようには見えません。
視聴者を混乱に突き落としつつ、バターズは彼の身を案じたケニーを共連れにカウアイ島へ到着します。すると彼を出迎えた「両親の部族」の人々は、これまたアロハシャツを着た白人ばかり……。彼らは言います。「私は十年も前から毎年夏の間ここにいるネイティブハワイアンだ」「私は三年前からネイティブハワイアンだ」
要するにリゾート客です。
彼らはバターズを”村”ーーリゾート客向けのゲーテッド・コミュニティへと連れていき、立派な「ハワイ人」になるための試練を課そうとしますが、事態は思わぬ方向に……。
全編が皮肉で出来た、秀抜なエピソードです。
s16ep12「ハロウィーンの悪夢(A Nightmare on Face Time)」
ハロウィン回はアメリカ製カートゥーンにとっての温泉回のようなものです。『シンプソンズ』では毎年決まったタイトルにナンバリングを通してハロウィン回を流すほど。サウスパークでもちょくちょくハロウィンが催されます。
本エピソードは、スタンの父親のランディが潰れかけたレンタルビデオチェーンの店舗*1を買い取るところから始まります。
一国一城の主となって浮かれるランディですが、家族の反応は後ろ向きです。それもそのはず、ネットフリックスを始めとした映画配信サービスの隆盛により、レンタルビデオ店など誰も利用しなくなっているからです。
それでもノスタルジーに毒されてレンタルビデオ店の復活を信じるランディでしたが、店は閑古鳥が鳴くばかり。陰気な店内で彼は徐々に精神を病みだし、亡霊が見えだすように……そう、『シャイニング』のオマージュですね。
アメリカ人がどうしてここまで自分たちのコンテンツに映画ネタ引用に執着するのかは大いなる謎とされますが、ともかくも題材的にも映画ネタを使う必然があって実にハーモニアス。
ちなみにかつて世界9000店舗を誇ったビデオレンタルチェーン「ブロックバスター」は本エピソード放映に先立って2010年に破産し、2019年末現在はオレゴン州に一店舗がほそぼそと残るのみ。逆に希少価値があがって「生ける歴史博物館」として観光スポットになっているのだそう。
s17ep6「赤毛の牛(Ginger Cow)」
資本主義、人種差別、ときたら当然宗教ネタも外せません。クリエイターコンビはなにせモルモン教を題材にしたミュージカル*2でトニー賞を獲っていますしね。
カートマンが赤毛の牛を捏造するイタズラをしたことがなぜか聖書の予言にある「赤毛の牛の出現」の奇跡に繋がり、いがみあっていたユダヤ教・キリスト教・イスラム教が和解して一つになる方向へと動きます。
はじめは赤毛の牛の存在を不快に思っていたカイルでしたが、宗教間対立を収めるカギとなるとしるや、一転していたずらであったことを隠し通そうとします。
それを知ったカートマンは当然カイルを徹底的になぶろうとするわけで……というお話。
最後のツイストが効いてます。
ちなみにS17はこの後のep7から始まる四話ひとつながりの『ゲーム・オブ・スローンズ』リスペクトエピソードが白眉なのですが、選定の基準から外れるのでここではメンションにとどめておきます。
s18ep6「フリーミアムは無料じゃない(Freemium Isn't Free)」
ソシャゲやってる日本人は全員が視聴すべき神回。
ちなみに海外ではガチャは法的に規制されているので、まだ日本より良心的なのかもしれません。
s19ep4「食べるログお断り(You're Not Yelping)」
日本でも評論家気取りの食べログレビュアーは忌み嫌われて揶揄の対象にされていますが、アメリカにも似たようなレビューサイトと文化があります。Yelpです。
サウスパークの街中がにわか美食評論家となり、レビューの星をネタに飲食店を脅迫して過度なサービスをせびりまくる。彼らの横暴に絶えられなくなった店側は「Yelpレビュワー入店お断り!」の張り紙を出し、一時的に平和を取り戻しますが、本当のカタストロフはそこから始まるのでした……。
エミー賞も受賞した名エピソードです。ネット文化なんてどこの国でもクソしか生み出さないことがよくわかる。
教訓
97年の放映開始から20余年を経た現在でも、『サウスパーク』が時代の最先端を行く最高に先鋭的で実験的な風刺コメディの地位を保ち続けているのか?
と問われれば、肯定はしづらいのが正直なところです。フォーマットが定まっているがゆえのマンネリズムからは逃れえませんし、特に近年の政治・社会的状況の変化にキャッチアップできていない部分も見られます。
ですが、少なくともクリエイターたちは最高に先鋭的であろうとする努力を続けてはいる。時代の波を真正面から受け止めようと試みている。
それこそが彼らの偉大さであり、今なお観られるべきコンテンツの座にある理由なのです。
そういう教訓を胸に刻んで、君たちも明日から立派なサウスパーク町民として生きてもらいたい。
そしてこう叫ぼう。
Make Star Wars Great Again.
名作。
*1:『キャプテン・マーベル』でも出てきた「ブロックバスター」
*2:“Book of Mormon"