年ベスト級が三つ。豊作です。
👍『ライト/オフ』(デヴィッド・F・サンドバーグ)
「ライト/オフ」予告編
姉映画。
👍『アメリカン・レポーター』(グレン・フィカーラ)
全然前に進めない人生を革命するためにイラク戦争中のアフガニスタンに飛んだ女性レポーターの話。アドレナリンどばどばでる土地で思わぬ大手柄や愛人をゲットしてやったぜアフガンサイコーみたいなノリになるんだけど、でもあなたの食べて祈って恋をしての裏では人が死んでるんですよ、という事実をつきつけられて鬱になったりする。
いかにもアメリカ人っぽい業にまつわる寓話です。
👎『死への招待状』(アンソニー・ディブラシ)
角帽の板の部分がするどい刃物になっていて、投げると手裏剣みたいに被害者のクビを断ち切るサイコ・ホラー。あるいはスラッシャー。
前半、妙にテレンス・マリックというかデヴィッド・ロウリーというか、そういう風味のフォトジェニックな画が挿入されて変な心地になるんですが、後半はそんなことなど忘れたかのような即物的なつなぎになる。
👎『スーサイド・スクワッド』(デヴィッド・エアー)
映画『スーサイド・スクワッド』日本版予告編3
なにはともあれ、エンチャントレスですね。途中から、キレエナネエチャンデスに変わってすごくがっかりしたんですが、終盤でまたエンチャントレスに戻ってくれるのでよかった。
でもいちばん観たかったのは、デイヴィッド・エアーの映画だったんですけどね。
🙌『聲の形』(山田尚子)
窮極的には、人間未満の存在が人間になる(なろうとがんばる)話が好きなんだなあ、と思います。山尚ってもしかして冥土を理想視してんのかな。
『聲の形』については⇡で四つ記事を書きました。
👍『レッドタートル』(マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット)
浦島太郎が竜宮城で亀をドツきまわしていじめてたら何故か乙姫様と結婚できることになってラッキー、みたいな映画です。なにをいってるんだ、と思われそうですが、だいたいそういう話です。
そういう話なんですが、絵と画の力がずばぬけている。何をどうしたらこんなアニメーションができあがるのか。カメがカメらしいのも好感触ですね。
今年のアカデミー賞フランス枠は昨年度のアヌシー受賞作である『Avril et le Monde Truqué(April and the Extraordinary World)』と、デンマークとの共同制作で今年の東京アニメアワードフェスティバルを獲った『Tout en haut du monde(Long Way North)』、そして本作の三つ巴(言語は英語だけど、『リトルプリンス 星の王子さま』も入れたら四つ。本年度のアヌシーウィナーである『Ma vie de Courgette』まで含まれるとしたら五つ。)と見られているんですが、indiewire などの映画情報誌の予測によれば『レッドタートル』が頭一つ抜けてるようです。候補になったとして、今年はその後が大変な年なんですが。
🙌『ハドソン川の奇跡』(クリント・イーストウッド)
C・イーストウッド監督×トム・ハンクス主演『ハドソン川の奇跡』予告編
いままで120分とか140分かけてやってきた話を90分台につめこんだイーストウッド作品がおもしろくないわけない。構成といいますか、事故の場面を多視点的に語る技術に舌を巻く。
🙌『ミストレス・アメリカ』(ノア・バームバック)
MISTRESS AMERICA: Official HD Trailer
サブカルクソ野郎映画オブジイヤー。バームバックのベストは『フランシス・ハ』だったんですが、余裕で超えてきた。快楽的なまでにテンポの良いカットはそのままに、とにかくキャラ同士の関係性で刻んでくる。
👎『真田十勇士』(堤幸彦)
これを『スーサイド・スクワッド』のあとに観ると、スースクが傑作におもえてくるからオススメ。
👍『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years』(ロン・ハワード)
「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years」本予告
ビートルズがライブツアー続きでウルトラ大変だった時期のドキュメンタリー。当然、ビートルズの曲が悪いわけないし、ウーピー・ゴールドバーグやシガニー・ウィーバーがティーンのグルーピーに戻ってはしゃぐさまや、四人が仲良しな様子はそれなりに観ててハッピーなのだけれども、「リンゴ・スターがMI6のスパイだった」みたいな衝撃の新事実がいまさら出てくるわけもなく、淡々としている。
あとビートルズはライブを画面越しに観てもそんな愉しいタイプじゃないですね。
👍『マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり』(ベン・パーマー)
マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり
サイモン・ペグとロリー・キニアのあいだで板挟みなる映画と聞いて。下衆だが下品ではないロマコメ。本来なら打ち捨てられるような脇キャラにまで愛が行き届いてますね。
ロリー・キニアは変態役だとあの高音が情けない印象になるんでしょうけど、NTLの『オセロー』やホロウクラウンの『リチャード二世』を通過した身だと高貴さしか醸し出されなくて、いっちょんつらい。
👎『ガール・ライク・ハー』(エイミー・S・ウェバー)
A GIRL LIKE HER - Final Theatrical Trailer
手法はドキュメンタリー番組とPOVとフッテージの混合。ある意味でファイク・ドキュメンタリーのごった煮みたいな。この分野のいじめの加害者側にスポットライトを当てたつくりは『聲の形』に似ているけど、あーアメリカの社会派インディペンデント作品ではこう処理してくんですかー、って印象。