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2018年上半期の生き残るべき新連載マンガ十選

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 一月ごとにまとめるはずが三月あたりからめんどくさくなったのでこの有様です。どの有様かな。

 というわけで、六月末日までに出た新刊漫画(新連載作)で個人的におもしろかったな、早く続きが読みたいな、と思ったものを選びました。いつのまにか既に終わってたらすいません。

 以前こういうリスト記事で72作とか挙げたら「多すぎる」と怒られたので、反省をふまえ、今回は十作+αにします。αには任意の数字が入ります。とりあえず覚えてる分だけなので、面白い作品で忘れたものがあったらごめんなさい。いや、あるんですよ。面白くても忘れるもの。

 例のごとくKindle版出ているやつ限定です。言っている意味がわかりますか、T島社? メガストア
 短編集とか単発長編とかは別の記事でやります。
 では、いってみよう。

2018年上半期の十選

まつだこうた『骸積みのボルテ』(バーズコミックス)

骸積みのボルテ  (1) (バーズコミックス)

骸積みのボルテ (1) (バーズコミックス)

 従属先であった帝国の奸計によって滅ぼされた部族の生き残り、ボルテ・コア。平凡な少女にすぎなかった彼女は戦後、なぜかほとんど不死に近い自己再生能力を具えるようになり、帝国兵士を襲うテロリスト「骸積み」として恐れられていた。ボルテは親兄弟の仇で現在は行方不明となっている帝国皇帝の娘イリアを探して帝国領内を彷徨う。

おかか』、『超人間要塞 ヒロシ戦記』のまつだこうた先生の最新作。複数の時制が入り乱れる語りをとおして「骸積み」誕生を描く実験的な開幕からも新しいファンタジーを紡ぎ出そうする先生の意欲が伺えます。
 戦場で同胞を皆殺しにされた女戦士が人間離れした戦闘能力を発現して夜狼のような復讐マシーンと化す漫画といえば、伊藤悠先生の『シュトヘル』を思い出さずにはいられないわけですが、伊藤先生のシュッとシャープで緊張感のある線に比べ、まつだ先生の産み出す柔らかくラブリーな輪郭のキャラクターたちは獣人の住む世界感と相まって、どこかほのぼのとした印象を受けます。そうした柔和なキャラデザインを活かして骸積み化する前のボルテの日常パートだったり、ボルテを追う帝国の「骸積み」討伐部隊の面々を描く一方で、戦闘シーンではバイオレンスが一挙に爆発する。このメリハリが導入部の複雑な語りと非常にマッチしていて、読者にワクワクを与えてくれるのです。
 一巻のラストページのヒキも見事。こんどこそ、の期待がふくらみます。


佐和田米『アクロトリップ』(りぼんマスコットコミックス)

アクロトリップ 1 (りぼんマスコットコミックス)

アクロトリップ 1 (りぼんマスコットコミックス)

 魔法少女ベリーブロッサムが守る街に住む中学生、伊達地図子。ベリーブロッサムの大ファンである彼女はある日、街を脅かす悪の組織の総帥クロマから「うちの参謀にならないか」と勧誘を受ける。ベリーブロッサムによって倒されることを快感にしていたクロマだったのだが、あまりにもダメダメなため、このままだと戦闘で負けるだけでは済まされず組織ごと滅ぼされるのではないか、と危惧を抱いたのだ。悪の組織が潰されてしまえばベリーブロッサムの活躍も見られなくなってしまう……ベリーブロッサムを輝かせ続けるため、地図子はベリーブロッサムの「影」になる決断をする。

 『りぼん』から現れた刺客。広義の魔法少女もの、といいたいところですが、ほとんどアイドルものに近い。アイドルものというか、アイドルファンもの、『推しが武道館に行ったら死ぬ』のノリに近いかな。いや、あそこまで狂ってはいませんが。
 かわいくてがんばりやの魔法少女(アイドル)、地味な営業活動で彼女を支えるマスコット(マネージャー)、魔法少女の活躍に感涙し一介のファンでありながら売り出し戦略まで妄想し、好きが昂じてなんだかよくわからない仕事を始めてしまった主人公(ファン)、という構図に「ヴィランあってのヒーロー/ヒーローあってのヴィラン」という『LEGOバットマン』的なスーパーヒーローもののテーマを組み込んだ悪魔合体漫画です。
 とにかくギャグがキレています。魔法少女も悪の総帥も主人公もそれぞれにポンコツで愛嬌があり、読んだらみんなだいすきになることうけあい。


山田果苗『東京城址女子高生』(ハルタコミックス)

東京城址女子高生 1 (ハルタコミックス)

東京城址女子高生 1 (ハルタコミックス)

 都内の高校に通うあゆりは彼氏との痴話喧嘩のもつれで、たまたま通りがかった同級生に怪我をおわせてしまった。おわびを申し出るあゆりに対し、その同級生、美音は「東京城址散策部」に入部するよう要求する。城址とは昔あった城の跡のこと。気乗りしないあゆりだったが、美音になかば脅迫される形で世田谷城跡へ連れて行かれることに。

 地味な題材を女子高生のキャッキャうふふで味付けして売ろうとするマンガ飽きた……と思っていた時期がわたしにもありました。
 ややそそっかしくて荒っぽい江戸っ子な主人公と、一見善良だが悪意なく悪意をぶつけてくるサイコパス城址マニア女子の掛け合いのテンポが絶妙に心地よいです。女子二人のコンビが剥き出しでやりあってる感は同じ『ハルタ』連載の『星明かりグラフィクス』に通じるものがあります(キャラ自体のタイプは全然違いますが)。
 話づくりも巧い。一話ごとにあゆりが日常でぶつかる悩み未満のひっかかりをわざとらしすぎない程度に城址にまつわるエピソードとからめてクレバーに落としていて、これぞ短編の名手といった趣。
 それにしてもここのところのハルタの新連載はどれも強いですね。


知るかバカうどん『君に愛されて痛かった』(バンチコミックス)

君に愛されて痛かった (BUNCH COMICS)

君に愛されて痛かった (BUNCH COMICS)

 恋慕していた男子に刺されて死んでしまった女子高生の回想から始まる衝撃のオープニング。女子高生かなえはクラスでは人気者グループの下っ端として必死に居場所を作る一方で、夜になると援助交際に走って「必要とされる」欲求を満たしていた。が、ある日、合コンで知り合った野球部のイケメン寛に援交現場を見咎められたことをきっかけ、もともと歪んでいた日常が音をたてて軋んでいく。

 映画にしろマンガにしろ、いじめという問題を多視点で描く作品が増えたように思いますけれど、これは本来「みんなかわいそう」に還元されるそうしたテクニックを「みんなクソで世界はゴミだ」にズラす禁断の呪法に変えていて、おっとろしいなとおもいます。なにかと怠惰におちがちなエグい系残酷話でありながらも、テンプレに対する繊細な反抗が迸っていて、今後が実に愉しみ。特に「わたしには友達(みんな)が居るんだ」という感動セリフの定型文をあそこまで悪意たっぷりに読み替られるに至っては感動すらおぼえました。


山本中学『戯けてルネサンス』(ヤングキングコミックス)

戯けてルネサンス 1 (ヤングキングコミックス)

戯けてルネサンス 1 (ヤングキングコミックス)


 『繋がる個体』の山本中学先生新作。極端な引っ込み思案と一風変わった名字のせいで陰惨な中学時代を送っていた西名生蓮。彼は学生生活を「リセット」しようと昨年まで女子校だった高校に入学し、男子が二人しかいないクラスに振り分けられる……も入学初日から緊張で嘔吐してしまう。果たして彼は女子だらけのクラスで自分の居場所を築けるのか。

『君に愛されて痛かった』が「世界は残酷です」という学園ものなら、本作は「世界は思ったよりもやさしい」というお話。
 常に後ろ向きな自意識モノローグを垂れ流しているコミュ障男子が変わりたいと願い、その一歩を踏み出そうする。その行為自体は美しくあっても現実問題、世間というのはそうした勇気ある一歩に対していつも理解があるわけではありません。
 が、本作ではとにかくそういう小さな勇気をとにかく肯定してくれます。つながろうとさえ願うのなら、コミュニケーションをはかる気持ちさえあるのなら、他人はちゃんと応答してくれるのだよ、という至極まっとうな応援をしてくれるいい漫画です。そのやさしさが嘘くさかったり、上っ面をなぞるだけにならないキャラクターの深度も魅力です。


福島聡『バララッシュ』(ハルタコミックス)

バララッシュ 1巻 (ハルタコミックス)

バララッシュ 1巻 (ハルタコミックス)

 2017年。アニメ監督・山口奏と作画監督宇部了の幼馴染コンビは初めてのオリジナル長編劇場アニメを成功させた。物語はそこから三十年を遡り、1987年、十七歳だった二人の出会いに移る。アニメオタクであることを隠してリア充グループに属していた山口は、天才的なイラストレーションの才能を持った宇部を見出し、二人でアニメ業界に進むことを決意する。彼らは志望する東京のアニメスタジオに見学に行くのだが、動画志望の宇部が即戦力として遇される一方で、演出志望の宇部はスタジオの監督から「お前は凡才だ」と言われ……。


 ビーム系の狂児、ロマン溢れるひねくれマンガばかり描いてきた(印象)福島聡先生の最新作はなんとストレートに爽やかな青春もの。
 昭和アニメ史を描く実録的な側面から言えば、アニメ版『アオイホノオ』とでも呼ぶべきでしょうか。アオイホノオもアニメですが。そこに日本橋ヨヲコ成分を足した感じ。
 演出志望のアニオタとアニメーター志望の天才のコンビで、視点を前者に置いてるところが重要です。アニメーターは高校生でも絵をかけばある程度実力を示せるけれども、演出のほうはそうもいかない。後に監督として大成すると初手で示されているとはいえ、17才時点の山口は単にアニメをたくさん観てるだけのオタクにすぎません。その格差を自覚しつつ嫉妬する気持ちと、夢を共にする唯一の仲間である宇部に対する友情との間で揺れ動くワナビ男子の繊細な心があたたかなまなざしでもって描かれていて、実にうつつい。
 

大窪晶与『ヴラド・ドラクラ』(ハルタコミックス)

ヴラド・ドラクラ 1 (ハルタコミックス)

ヴラド・ドラクラ 1 (ハルタコミックス)

 十五世紀の中欧、ワラキア公国(現ルーマニア)。周囲を大国に挟まれたこの小国に、新たな君主として若きヴラド三世が戴冠する。大国の思惑と有力貴族たちの専横に板挟みにされ難しい舵取りを迫られるヴラド三世であったが、政治的な妥協を重ねる陰で密かにある陰謀をめぐらせていた……。

 ”串刺し公”ヴラド三世はフィクションの題材にされる事が多い人物ですが、やはりクロースアップされるのは「元祖ドラキュラ」としての面であり、そこにきてスーパーナチュラルな能力を持たない一人の人間としての「ヴラド三世」を描こうとする試みはかなりめずらしい。
 話としては陰謀と談合を中心とした政治劇。ワラキア独特の統治システムや中世ヨーロッパの文化などのディティールがきっちり書き込んだうえでの展開なので、読んでいてかなり説得力があり、飽きません。一筋縄ではいかない大貴族との権謀術数のやりあいは、全体的に静かなタッチに反して、とてもエキサイティング。ハルタは伝統的に歴史ものに強いですね。


道満晴明メランコリア』(ヤングジャンプコミックス)

 ショートショートの名手、道満晴明先生による短編集。彗星メランコリアの接近により人類滅亡が秒読みとなった世界で織りなされる主に恋模様。

 生き残るべきもなにも、上下巻なので次で終わるんですが。
 あいかわらず『メランコリア』だったり『マグノリア』だったり映画・サブカルネタをしのばせつつ、各話ごとにきっちり小咄としてオチをつけ、世界を作り上げていくつまりはいつもの(『ニッケル・オデオン』以降の)道満晴明先生です。いつもの、な割りにマンネリ感が薄いのはドライさとリリカルさを共存させつつ気の利いた少し不思議エピソードをコンスタントに作り上げられる人材が現代日本にあまり存在しないからで、石黒正数先生が現状長編に専念している以上、しばらくは道満先生の天下が続くことでしょう。いいのか、ヒコロウ?


原作・久住昌之、漫画・武田すん『これ喰ってシメ!』(ニチブンコミックス)



「週刊漫画サボウル」の編集部でデスクとして辣腕をふるうアラフォー編集者神保マチ子(独身)が、若手編集者岡野ひじきとともに今日も元気に原稿を取り立てつつ、うまいメシを食う。

 グルメ漫画ってそんな好きじゃないんですよね。嫌いでもないんですけど。読むとお腹空くじゃないですか。それでも年に一本は心にヒットする作品が出てくるのでつい漁ってしまいます。今年はそう、『これ喰ってシメ!』。
 久住先生原作ものらしく、題材となる食べ物そのものに珍奇なところはありません。
 しかし、読ませる力が圧倒的に高い。まず絵がいい。構成がいい。会話のテンポがいい。「今の私達に必要なのはそう……炭と水の化物と書いて……タンスイカブツ!」や「鮨……!? あの魚へんに旨いと書く?」といった久住先生一流のしょーもないギャグが効きまくっている。
 悩みが解消されたり欝が治ったりするようなマンガではないですが、読み終わるといい感じの気分になります。


賀来ゆうじ『地獄楽』(ジャンプコミックス

地獄楽 1 (ジャンプコミックス)

地獄楽 1 (ジャンプコミックス)

 時代劇異能バトルロワイヤルものとでもいえばいいのか。絶海の孤島に送られた死刑囚たちが首切り役人(山田浅右衛門一門)とペアを組んで、ヤバい死刑囚やヤバい原生生物などを撃退しつつ、将軍様のために不老不死的なやつをゲットしようとする話。
 二巻までに数組の死刑囚×執行人ペアが出てくるわけですが、どのペアもバディものとしてのケミストリーが高い。基本的には「敵」同士なので緊張感がある一方で、ペアごとに独特の関係が築かれていてキャラ自体の個性よりは関係性の個性で見せる、こういうのもあるんだな、という感慨。


ーー


全然十選と入れ替えてもいい、既に十二分に面白い枠


田村由美ミステリと言う勿れ 1 (フラワーコミックスアルファ)、ふしぎな事件に巻き込まれたふしぎな大学生が事件関係者の生活の悩みを解決しつつ事件の謎も解いていくセラピーミステリ。主人公がスカしててムカつくという一点を除けば読みどころ満点。


デッドマウント・デスプレイ(1) (ヤングガンガンコミックス)、あの成田良悟異世界転生ものを!? ただし、転生元は異世界で、転生先は個性豊かな殺し屋とギャングの蠢くSHINJUKU!みたいな。


高野雀世界は寒い 1 (フィールコミックスFCswing)、ファーストフード店の店内で本物の拳銃を拾った女子高生六人組。扱いに困った挙げ句、「一人一発、撃ちたいやつを撃とう」ということでまとまる。ターゲット選びに苦慮する六人の前に、銃の元の所有者らしき人物が現れて……。一話ごとに六人それぞれに視点が切り替わる群像劇。題材といい空気感といいモノローグの入れ方といい生きていたのか岡崎京子チルドレン、という感じ。それまで抑え込んできた鬱屈が、銃という非日常によって開かれて物語がドライブしていきます。2018年にもなってこんなにまっすぐに平成初期の臭いをまとった鬱屈青春グラフィティを出せるとは、侮りがたし、FEEL。
 

仲川麻子飼育少女 (1) (モーニングコミックス)、高校の実験室で科学教師と女子高生がヒドラやナマコやイソギンチャクといった地味ないきものたちを飼育するギャグ漫画。題材の生態自体がギャグっぽいよね。


吉本浩二ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~(1) (アクションコミックス)、日本初の青年漫画誌(自称)『アクション』誕生を描く。『吉川先生のルポマンガにはある種のくさみがつきまとっていて、それは情に厚い好男子である吉川先生がインタビュアーとして前に出てくるせいであったのですけれど、本作は完全に実録ものに徹しており「作者」の姿は見えません。おかげでテンポのいいこと極まりない。


どるから (1) (バンブーコミックス)、脱税で逮捕されたK1の石井館長が出所直後にトラックに引かれて死亡(現実には生きています)、なぜか自殺した女子高生の身体にのりうつり、女子高生の経営する斜陽の空手道場を再建するという話。出落ち感があるわりに物語的な骨格がしっかりしていて、石井館長直伝の格闘技トーク・経営術トークがそれなりの説得力を持って展開されます。館長トークの出方がちょっと『プロレススーパースター列伝』っぽいですが。強敵と出会った館長が「解説者時代は色んなしがらみのおかげで自由に空手できなかったけど、死んで(現実には生きてます)初めてハジケられた。死んでよかった(現実には生きてます)!」とイキイキと闘う姿には涙が出ます。実際には生きてますが。


渡会けいじピヨ子と魔界町の姫さま(1) (角川コミックス・エース)魔界(町)の高校に通う人間の女の子と庶民的な魔王のお姫様(町なのだが)の学園ギャグ。なんでも額面通りに受け止めるアホの子とポンコツお嬢様の組み合わせはストレートに面白い。


志村貴子ビューティフル・エブリデイ 1 (フィールコミックス)、多作な割に平均点がここまで高い作家がいただろうか。あいかわらず主要人物は性格が悪い。しかし私たちは志村貴子先生の描く性格が悪い女を見たくてここまで生きてきたのではないでしょうか。


瀧波ユカリモトカレマニア(1) (KC KISS)、元カレを好きすぎるあまりイマジナリーフレンド化してしまったOLが実際の元カレと再会してしまってさあどうなる、という話。『勝手にふるえてろ』を瀧波ユカリ先生が書いたら感があります。


石川香織ロッキンユー!!! 1 (ジャンプコミックス)、高校でロックバンドやる漫画。「初期衝動」という言葉がそのまま結晶化したような第一巻であり、間違いなく青春マンガで今一番アツい作品。


とよ田みのる金剛寺さんは面倒臭い(1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)、恋とは奇跡に支えられたものだという精神に貫かれた恋愛コメディ。


大石浩二トマトイプーのリコピン 1 (ジャンプコミックス)、こういうノリで時事ネタをいじる少年漫画がいつのまにかなくなってしまっていましたね。


宮崎夏次系アダムとイブの楽園追放されたけど…(1) (モーニング KC)、夏次系先生わりと普通にギャグ漫画かけるじゃん、と思う一方でやはり短編のほうがシマッてるんですよね。


フォビドゥン澁川スナックバス江 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)、これまでのフォビドゥン先生に比べて気持ち悪さが二割ほど減っており、お子様にも安心しておすすめできます。自分に子どもがいたら読ませたくはないですが。



将来性がありそうなタイトル枠


三浦みうチルドレン 1巻 (デジタル版ガンガンコミックスUP!)、十四歳の園長を戴く山奥の幼稚園。そこは園児たちが人間を「処理」する殺人幼稚園だった……。キャッチーで悪趣味な残酷グロ設定が目に付きますが、出落ちにとどまらず、ちゃんとドラマを描こうとする気概も発揮されています。設定の慣性以上に伸びる予感がするというか、伸びる義務がある。


チノク白石君の動級生(1) (Gファンタジーコミックス)、動物に変身できる子どもたちのクラスに入った男子高校生の話。こういう学校だったら生きたないなあ、という人間のストレートな欲望が詰まっています


大沖たのしいたのししま(1) (週刊少年マガジンコミックス)、おもしろい方の大沖先生。


柳生卓哉メメシス 1 (1) (少年サンデーコミックス)、ウルトラ強い勇者のパーティーから役立たずとしてはじき出された戦士と魔法使いが勇者を見返すためにめっちゃ強くなるファンタジーギャグ。主人公二人の気持ち悪い友情がよい。


天地創造デザイン部(1) (モーニング KC)天地創造時に神様は動物のデザインをデザイナーに発注していた。動物をデザインするという思考実験。一見むちゃぶりに思える注文が実在の生物へ繋がるという意外性。動物の面白うんちくを退屈させないようにどう紹介するかという動物ものの懸念を上手に処理しています。


椙下聖海マグメル深海水族館 1 (BUNCH COMICS)、水族館で働くことになった男の子との成長譚。絵がいい、トピックがいい、テンポがいい。専門ウンチクもので全体のリズムが崩れずにすっきり読めるのは驚異的なことです。だからこそ主人公の悩みと成長に嘘がない。


山本亜季賢者の学び舎 防衛医科大学校物語 1 (ビッグコミックス)防衛医大に入学した医者(医官)志望の男の子の成長物語。題材のものめずらしさも手伝って、群像青春もののうまさが際立ちます。体育会系と文科系が入り交ざったなんともいえない独特の文化や上下関係がすてき。今んとこ先輩の理不尽なシゴキがただのシゴキにしか見えないんですが、これをどう良かった話につなげていくんですかね。実際今もやってるんだろうから否定もできないだろうし……。


武富智ロマンスの騎士(1) (裏少年サンデーコミックス)、近世のヨーロッパ騎士が現代の少年の身体に転生してフェンシングをやる……というあらすじを聞いて「逆『ビロードの悪魔』かよ」と興味を惹かれましたが、読んでみると真っ当にアツい青春スポーツもの。フェンシングのスタイリッシュな絵面と武富智先生の躍動感あふれる画作りが幸福にマッチしています。


美代マチ子ぶっきんぐ!!(1) (裏少年サンデーコミックス)、書店員ものってわるい意味でブッキッシュな作品が多い印象があるんですけれど、これはちゃんと「書店員の話」をしてくれるので好印象です。とはいっても変に業務についての細部を羅列するわけでもなくて、ちゃんと作劇のパースを取りつつ書店員の世界観で話を進行させていくかんじ。


瀬下猛ハーン ‐草と鉄と羊‐(1) (モーニングコミックス)義経チンギス・ハン説。ややスロースターター気味ですが、政治描写も骨太で、これから本格的な合戦に突入すると一挙に爆発しそうな予感。


原作・マツキタツヤ、漫画・宇佐崎しろアクタージュ act-age 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)、俳優バトル漫画。自分のなかでは『累』とか『響』とかと同じ枠なんですけれど、どういう枠なのかと聞かれると困ります。掲載順で打ち切りが危ぶまれたりもしましたが、重版かかったそうだし生き延びそう?


宮永麻也ニコラのおゆるり魔界紀行 1 (ハルタコミックス)、獣人や魔法の存在する魔界に迷い込んだ少女とその道連れというか保護者的な立場の悪魔のロードストーリー。一話一話マァー丁寧です。


ひらけいシンマイ新田イズム 1 (ジャンプコミックス)、このところ増えている教師もの。能力は高いが空気読めない系の教師が生徒や同僚の悩みを解決していく学園ギャグマンガ。この手のものとしてはわりに正攻法で攻めてくるが、主人公にドライさがいい話に傾きすぎないバランスで品がある。


カクイシシュンスケ柔のミケランジェロ 1 (ヤングアニマルコミックス)、全体の雰囲気としてはオーソドックスなスポ根ですが、過剰に「見る」ことで理屈っぼく強くなっていく主人公がいい感じ。


本田優貴ただ離婚してないだけ 1 (ヤングアニマルコミックス)、関係の冷えた夫婦ものなのかな……などと思っていたら、夫の元不倫相手を夫婦で殺してしまったところで一巻が終わり、次が気になります。


ふみふみこ愛と呪い 1 (BUNCH COMICS)、今度こそどうにかなってほしい。


原作・七月鏡一、作画・杉山鉄兵探偵ゼノと7つの殺人密室 1 (1) (少年サンデーコミックス)、名探偵ゼノが有名建築家に挑戦状を叩きつけられ七つの殺人密室を解いていくという往年のメフィスト臭溢れる館ミステリ。トリック自体は館の仕掛け(物理)に全振りしているので一般的な意味でのミステリ的な驚きを求める向きにはアレかもしれませんが、ここまで館のロマンを信じた作品はマンガじゃ最近でも珍しい。


原作・縞田理理、漫画・みよしふるまち台所のドラゴン 1 (ジーンピクシブシリーズ)、東欧に留学した女の子がドラゴンを拾って飼う話。ドラゴンが適度に知能のない「動物」って感じでリアリティがあります。けだものであることの愛嬌ってあるよね、といいますか。


八木教広蒼穹のアリアドネ(1) (少年サンデーコミックス)、戦闘ロボ少年と天空のお姫様のボーイミーツガール冒険もの。やはり年上なところが八木先生の業。


人生負組ぼくらのペットフレンズ (電撃コミックスEX)、よく怒られなかったな、このタイトル。


Cuvieエルジェーベト(1) (シリウスKC)、筋トレマニアのお姫様による陰謀劇。史実。筋トレも史実。


三都慎司ダレカノセカイ(1) (アフタヌーンKC)、想像した物体を実体化できる「クリエイター」と呼ばれる能力者として覚醒した少年がクリエイター同士のバトルロワイヤルに巻き込まれていく。少年漫画誌的なおおぶりなコマ割りに緻密な作画とセリフの絞られた作劇が展開していく。青年漫画誌バトル漫画の王道の感。もうすこしディティールがはっきりしてくれば。


原作・村田真哉、作画・柳井伸彦ヒメノスピア 1(ヒーローズコミックス)【期間限定 無料お試し版】、女王蜂のパワーで周囲の女性を働き蜂化(ハーレム化)していく女子高生のサスペンス。今やすっかりひとつのジャンルとなった「動物能力もの」の元祖村田先生ですが、バトルもの以外もいけるやんけ。


漫☆画太郎星の王子さま 1 (ジャンプコミックス)、最悪なことにちゃんと『星の王子さま』をやっている。


秦三子ハコヅメ~交番女子の逆襲~(1) (モーニング KC)、クサくなりすぎない人情話の作り方が上手。


福田秀ドロ刑 1 (ヤングジャンプコミックス)、主に窃盗事件を扱う警視庁捜査三課、通称ドロ刑を舞台に若手刑事と謎多きナイスミドルの泥棒が凸凹タッグを組むバディ系ミステリ。刑事は泥棒を通じて「犯人の心理」をシミュレートすることを学び、現場に残された痕跡から犯人のキャラクタを探る。敵か味方が定かでないまま刑事を振り回す泥棒の造形が魅力的。


陽東太郎遺書、公開。(1) (ガンガンコミックスJOKER)、急死したクラスナンバーワンの人気者、その彼女はクラスメイト一人ひとりにあてて遺書をのこしていた。彼女の死の真相めぐり、遺書を公開し合う学級会が始まる……。日本版『13の理由』。一巻からそれなりに面白かったんですけれど二巻から急にドライブかかってきて、オッ、と思っていたら三巻で終わるようで。一見何の変哲もない「お別れ文」からクラスみんなで違和感を探り出していくシステムはなかなかアイディアだったと思います。


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