目次
年末のベスト作品選定はゆーすけさんのおっしゃるとおり「本当に自分がつまらない人間だと確認する作業」で、それなりに観たはずなのに好きなものを選んでみると自分でも他の誰でも良いような、節操と個性と信念と一貫性のないセレクションができあがってしまい、俗だなあ世間だなあこんなんで自由意志を持った人間だと証明できるのかなあと泣きたくなるわけですが、まあそれはしょせん個人の問題なので、選んだ作品のおもしろさには関係ない。おもしろいものはおもしろい。公共は選者の自意識などどうでもいいのです。
というわけで2017年に公開された映画、ドラマ、アニメのベスト。
- 目次
- 映画部門
- 映画ベスト20作
- 1『20センチュリー・ウーマン』(マイク・ミルズ監督、米)
- 2『お嬢さん』(パク・チャヌク監督、韓)
- 3『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(ノア・バームバック監督、米)
- 4『ノクターナル・アニマルズ』(トム・フォード監督、米)
- 5『ベイビー・ドライバー』(エドガー・ライト監督、米)
- 6『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』(ギャヴィン・フッド監督、英)
- 7『パターソン』(ジム・ジャームッシュ監督、米)
- 8『ローガン・ラッキー』(スティーヴン・ソダーバーグ監督、米)
- 9『夜は短し歩けよ乙女』(湯浅政明、日)
- 10『三度目の殺人』(是枝裕和監督、日)
- 11『コクソン』(ナ・ホンジン監督、韓国)
- 12『ドリーム』(セオドア・メルフィ監督、米)
- 13『美しい星』(吉田大八監督、日)
- 14『グリーン・ルーム』(ジェレミー・ソルニエ監督、米)
- 15『ナイス・ガイズ』(シェーン・ブラック監督、米)
- 16『ラビング 愛という名のふたり』(ジェフ・ニコルズ監督、米)
- 17『帝一の國』(永井聡監督、日)
- 18『ジョン・ウィック:チャプター2』(チャド・スタエルスキ監督、米)
- 19『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(ジョン・リー・ハンコック監督、米)
- 20『この世に私の居場所なんてない』(メイコン・ブレア監督、米)
- +5
- 映画ベスト20作
- 映画作品各部門賞
- ドラマ、テレビアニメ
映画部門
なんか選んでみればアメリカ映画ばかりですね。ミニシアターあんまし行かなかったせいでしょうか。それともアメリカがおもしろい年だからでしょうか。
映画ベスト20作
1『20センチュリー・ウーマン』(マイク・ミルズ監督、米)
母子&疑似姉カミングエイジ映画。映画というものは現実には絶対ありえない完璧な空間を二時間の空き瓶、あるいはガラス玉にとじこめた何かであって、そういう観点において『20センチュリー・ウーマン』は紛うことなき幸福の完成形。俳優、ストーリー、プロット、スタイル、セリフ、演出、美術、画調、ネコ、なにもかも、そう、なにもかもだよ。
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2『お嬢さん』(パク・チャヌク監督、韓)
レズビアンやすりムービー。ときおり強大な怪物じみた作品に出会って為す術なく喰われてしまうことがあり、そんなときはしゃーないとあきらめるしかないです。あなたはあきらめましたか?
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3『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(ノア・バームバック監督、米)
クソ家族映画。大人になってもわかったりわからなかったり許したり許せなかったりを繰り返すんだ私も君も。それを家族と呼ぶのですね。これも『20CW』と一緒で「どんなに親しくなったつもりでも、やはり自分と他人との間には決定的な隔絶がある。それが肉親であったとしても」という点が癖(ヘキ)です。犬がいいです。
4『ノクターナル・アニマルズ』(トム・フォード監督、米)
読書人映画大賞。読むという行為は慢性の多動症に罹った映画の運動においてもっとも鈍重かつ無粋な、忌避すべき運動であって、撮るにあたって最も困難を極める主題のひとつです。たとえば濱口竜介の『ハッピーアワー』なんかもその壁に対する挑戦でした。まさかトム・フォードが超克するとはね。
5『ベイビー・ドライバー』(エドガー・ライト監督、米)
繊細で傷つきやすい童心をハッピーな音楽とスタイルで包んだやさしいファンタジー。こういう自分だけの閉じた世界に耽溺するピュアな魂がゆさぶりをかけられるサンドボックスめいたお話は好きですね。つうか映画で好きなのはそんなんばっかだ。
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6『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』(ギャヴィン・フッド監督、英)
ドローン爆撃サスペンス。2017年のわりと早い時期に観てむっちゃいいなと思った感触だけは残っているけれど、よそさまの年度ベストにはあんま入ってきてないっぽいところを見ると自分の感覚を疑ってしまいますよね。ともかく、視線による監視と官僚的な事務手続きにおける駆け引きという二つのサスペンスがエキサイティングに混ざりあった良いエンタメです。
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7『パターソン』(ジム・ジャームッシュ監督、米)
退屈な瞬間が一つもない偉大なる倦怠。物語的な指向性をもたない反復をライミングとして機能させるマジックはどこからどうして生まれたんだろう。犬がいいです。
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8『ローガン・ラッキー』(スティーヴン・ソダーバーグ監督、米)
ド田舎ケイパー映画。登場人物が「カントリー・ロード」を歌い出す映画は名作(rf. 『キングスマン:ゴールデン・サークル』)。今年もアメリカ人はアメリカ論映画をいっぱい作りましたね。そのなかでも白眉がこの一作。
9『夜は短し歩けよ乙女』(湯浅政明、日)
おれたちにとってのカントリー・ロードであり、森見登美彦は日本のジョン・デンヴァー。後天的に京都を獲得する才能がなかったきみにはわかるまいが。
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10『三度目の殺人』(是枝裕和監督、日)
法廷ミステリ。法廷をゲームのフィールドの作品として見なす作品は多いんですけれど、そこに「ムラ社会としての法曹界」という視点を持ち込めるのはさすが是枝。そのことがちゃんとミステリ劇のエンタメ性に貢献してますしね。
ところで『凶悪』もそうだったんですけど、こういう映画で登場人物の口からテーマというか構図の企みみたいなのを語っちゃうのは日本映画の悪癖だと思います。
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11『コクソン』(ナ・ホンジン監督、韓国)
呪術師や犬や素っ裸の國村隼が出てきて隕石のように存在を刻むだけ刻んで帰っていく。凄まじさだけでいったら今年ナンバーワン。そして映画とは凄まじさだけを体感するための装置であるので、実質今年の裏ナンバーワンであるといえます。犬がいいです。
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12『ドリーム』(セオドア・メルフィ監督、米)
黒人女性がNASAで働いてロケット飛ばす映画。清く輝く恒星のような作品であることはたしかで、それをもって忌避する向きもあるようだけれど、それはまああくまで題材の問題でしかなく、たとうべきはその観客の快楽スイッチを知り尽くした演出の妙なのです。
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13『美しい星』(吉田大八監督、日)
変なSF。ネームドキャラはもちろん、画面の端に写っているモブを含めて「生きている」感がにおいたつ映画も希少で、その一点だけでも吉田大八は信頼に値します。
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14『グリーン・ルーム』(ジェレミー・ソルニエ監督、米)
ネオナチに閉じ込められて殺される映画。この敵も味方もほんとうにもうどうしようもなく頼りない感じがソルニエ映画の醍醐味で、三十分に一秒くらいは真理の端に触れているのかもしれないという錯覚を抱かせます。犬がいいです。
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15『ナイス・ガイズ』(シェーン・ブラック監督、米)
ライアン・ゴズリングが少女のように泣き叫ぶ映画。ブルータルなノリながらも、底に流れる善良さはある種の人間讃歌なのだとおもいます。あとやかましいガキが作劇の足をひっぱらない珍しい映画。
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16『ラビング 愛という名のふたり』(ジェフ・ニコルズ監督、米)
50年代のヴァージニアで黒人と白人が結婚することになってもちろんひどい目に合わされる映画。わたしの脳みそでは、「いいなあ」とおもった細かい演出の記憶が経時揮発していく仕組みになっていて、よってそういうものの集積であるところの本作も今となっては「なんかめっちゃよかった」の残滓しか残っていないのですが、そのよすがさえ忘れてなければ善く生きていけるのではないでしょうか、人間は。
あとまあジョエル・エドガートンは常にいいですね。『ジェーン・ゴット・ガン』や『ブライト』といった作品単位ではダメなものでも、彼はいい。
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17『帝一の國』(永井聡監督、日)
原作ファンだったのでとりあえず観に行ったんですけれど、ぜんぜん期待してなかった映画が思ったよりおもしろいとお得感倍増ですよね。原作のアホらしさはしっかり汲みつつ、アクの強すぎるところは抑え、その穴を気の利いたオリジナルのギャグで埋め、原作を解釈することでいい感じにテーマ性を付加し、かつ十巻分の話を無理なくちゃんと映画としてまとめ上げた、最高峰の国産漫画原作映画のひとつでしょう。*1
野球場で殴り合うシーンで泣きかけた思い出がある。
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18『ジョン・ウィック:チャプター2』(チャド・スタエルスキ監督、米)
『アトミック・ブロンド』もよかったっちゃよかったんですが、やっぱりキアヌ・リーヴスじゃないとニューヨークは暗殺者という名の恋人たちの街にならないんですよ、甘犯ですよ。
犬が前作よりパワーアップしてロケットランチャー食らっても死なないボディになっていました。
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19『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(ジョン・リー・ハンコック監督、米)
マクドナルドの「創業者」の伝記映画。わたしの大好きなジャンルである「アメリカン・ドリーム残酷話(夢見るクズが成り上がって破滅したりしなかったりする系の話)」ものは2017年も豊作で、『ウォードッグス』や『バリー・シール』も銘記されるべき収穫物でしたね。
アメリカン・ドリームでサクセスするためにはアメリカン・ドリームそのものを売らなければならない、という本質のつきかた(ではアメリカン・ドリームとは何か、という問いかけ含め)が冴えている。それを成り立たせるためのマイケル・キートンの気迫とハンコックの演出も。
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20『この世に私の居場所なんてない』(メイコン・ブレア監督、米)
絶望的な人生であがく系映画。メイコン・ブレアは今年の新人王(監督)。
ジェレミー・ソルニエの盟友だけあってダメな小市民がダメなプチ悪役相手に奮闘する情けない物語ですが、それでもかすかでも人間としての尊厳と希望をつかもうとするメラニー・リンスキーと、ニンジャマスター・イライジャ・ウッドのすがたにわれわれは滂沱の涙をながすわけです。メイコン・ブレア関連では『スモール・クライム』も要チェック。
+5
『デ・パルマ』(ノア・バームバック&ジェイク・パルトロウ監督、米)
ブライアン・デ・パルマのドキュメンタリー。ほとんどデ・パルマによる独り語りみたいな内容で、観客はつねに「このうさんくさいおっさんは信用できるのか???」という疑問に苛まされながら観ることになる。さいこうにスリリングですね。
『バリー・シール アメリカをはめた男』(ダグ・リーマン監督、米)
アメリカ残酷話。それまで状況に流されるしかなかったトム・クルーズが他人に利用されてされてされ尽くして切り捨てられた果てにやっと自分の「声」で語りはじめるのが最高にアツいんですよ。その顛末を含めてね。
ダグ・リーマンは2017年にもう一本公開されていて、『ザ・ウォール』もなかなかいい具合にアメリカに対して辛辣でした。
『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』(テレンス・デイビーズ監督、英)
詩人エミリ・ディキンスンの伝記映画。全編に渡ってセリフが、それこそ詩のように美しく、ときにウィットがきいていてここちよい。
とにかくこれみよがしに扉を閉ざす演出を使いまくるのでなんでかな、と思ってたらまさかあのオチに使うためとは。いかにもアートハウス系映画っぽいようで、なかなかゴリラみたいなマッチョな一面もふせもちます
『はじまりへの旅』(マット・ロス監督、米)
大家族ロード・ムーヴィ。深い森の奥でサバイバル生活を営んでいたり、娘の『ロリータ』の読解をテストしたり、クリスマスの代わりにチョムスキーの誕生日を祝ったり、とにかくエキセントリックなヴィゴ・モーテンセンおとうさんを観ているだけで楽しい。
内容は陽性でありながらもわりあいビターで、オトナはオトナやってるけどそれはかならずしも完璧な人間って意味じゃないんだよ、とやさしく教えてくれる映画です。
ラストカットがめちゃくちゃ好き。
『俺たちポップスター』(アキバ・シェイファー&ヨーマ・タコンヌ監督、米)
『ブルックリン・ナイン・ナイン』のアンディ・サムバーグ(と彼の率いるコメディバンド「ザ・ロンリー・アイランド」)による音楽モキュメンタリー。
とにかく出演陣がめちゃくちゃ豪華。現在のアメリカ音楽界のトップティアーに位置する人たちが勢揃いといった様相です。そんな豪華メンツに何させるかといえば、アンディ・サムバーグ扮するクソ歌手をひたすら褒め称えさせる。あるいはオオカミに喰わせる。すごいね。すごいよ。
映画作品各部門賞
アニメーション映画ベスト
☆『夜は短し歩けよ乙女』(湯浅政明監督)
『夜明け告げるルーのうた』(湯浅政明監督)
『レゴ(R)バットマン』(クリス・マッケイ監督)
『モアナと伝説の海』(ロン・クレメンツ&ジョン・マスカー監督)
『カーズ クロスロード』(ブライアン・フィー監督)
『ガールズ&パンツァー最終章 第一話』(水島努監督)
『ルーのうた』はタイトルクレジットの出方で泣くでしょ。本エンドのベストオープニング・クレジットです。
『レゴバットマン』は、みんな言ってることではありますけど、バットマン映画として一番誠実な作り方をしている。
ドキュメンタリー映画十選
☆『デ・パルマ』(ノア・バームバック&ジェイク・パルトロー監督)
『テキサスタワー』(キース・メイトランド監督)
『くすぐり』(デイビッド・ファリアー&ディラン・リーブ監督)
『ストロング・アイランド』(ヤンス・フォード監督)
『イカロス』(ブライアン・フォーゲル監督)
『覗くモーテル』(マイケル・カネ&ジョシュ・クーリー監督)
『リュミエール!』(ティエリー・フレモー監督)
『ぼくと魔法の言葉たち』(ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督)
『ジム&アンディ』(クリス・スミス監督)
『目標株価ゼロ』(テッド・ブラウン監督)
2017年のドキュメンタリーは「私達の眼の前で語っているこの人物のことばは『真実』なのか?」といった問いかけを投げかける作品が印象的でした。『デ・パルマ』の怪しさ全開のデ・パルマじいさんは感触レベルとはいえ、『ストロング・アイランド』や『覗くモーテル』などははっきり「うそ」がテーマになるし、ジム・キャリーのドキュメンタリー『ジム&アンディ』に至っては虚構と現実の境界がどこにあるのかさえわからなくなってくる。
あるいはエスカレートしていく世界の闇。自転車レースでのちょっとした実験から世界を巻き込んだロシア・スポーツ界ドーピング疑惑の渦中へと巻き込まれていく『イカロス』、大の男たちがくすぐりあいっこをするという奇妙ではあるけれども一見無害そうな謎の動画から底なしの悪意を垣間見る『くすぐり』はホラーとしても一級でしたね。
『ストロング・アイランド』については、個別に付言しておく必要があるでしょう。この作品はNYに住むある黒人女性が白人とのトラブルから銃殺された兄についての真実を追っていくという内容で、ネットフリックスに溢れる黒人受難系のドキュメンタリーのひとつ。
しかし、終盤明かされる「ある情報」が本作をシンプルな人種差別告発問題とは異なるパースペクティブを提示するのです。ある種叙述トリック的な仕掛けであるのですが、それは観客を劇映画的に驚かせようとするため、というよりは監督自身の懊悩と誠実さの発露として顕れるものであって、この仕掛けがあるからこそむしろ告発がより力強さを増すのだといえます。
語りの虚構性、作為性に言及した映画はドキュメンタリーにかぎらず近年増えているように感じますが、語り手の気持ちの揺れがミステリ的なトリックとして表出してしまう映画はめずらしいですね。
ソフトスルー部門
☆『ウォー・ドッグス』(トッド・フィリップス監督)
『ライフ・ゴーズ・オン』(ケリー・ライヒャルト監督)
『ハーフネルソン』(ライアン・フレック監督)
『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』(タイカ・ワイティティ監督)
『疑わしき戦い』(ジェームズ・フランコ監督)
『人生はローリングストーン』や『アメリカン・ミストレス』で殴られた2016年度と比べるとインパクトに欠けるメンツ(そもそも本数あんま見てなかったせい)ですが、どれも一癖二癖あってなかなか粒ぞろいです。長年放置されてきたR・ゴズリング主演の『ハーフネルソン』が出たのは嬉しかったですね。『ラ・ラ・ランド』さまさまです。ヤクでへろへろになった情けないゴズリングさんの姿が見られます。さすがにクズ野郎映画の手練、フレック&ボーデンコンビ。
上記のメンツで唯一『疑わしき戦い』だけはダメなかんじのやつですが、まあ来年の『ディザスター・アーティスト』公開への伏線ということで。
ネットフリックス・オリジナル(独占配信)作品10選
☆『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』
『この世に私の居場所なんてない』
『ストロング・アイランド』
『ザ・ベビーシッター』(マックG監督)
『マッド・バウンド 悲しき友情』(ディー・リース監督)
『ギャンブラー』(ジョー・スワンバーグ監督)
『イカロス』
『ジェラルドのゲーム』(マイク・フラナガン監督)
『オクジャ』(ポン・ジュノ監督)
『マインドホーン』(シーン・フォーリー監督)
ネトフリ・オリジナルはいい具合に玉石混淆といった様相を呈してきて、ポン・ジュノを起用したりマイク・フラナガンをやたら厚遇したりマックGを復活させたりメイコン・ブレアをデビューさせたりしてくれる一方で、『ブライト』とか『デスノート』とか『ホイールマン』とかではしっかりガッカリさせてくれました。アダム・ヴィンガードもデイヴィッド・エアーもフツーにファンなのに、なんてことだ。
一つこの場で言及するとしたら『ザ・ベビーシッター』でしょうか。甘酸っぱい疑似姉ものの良作です。『20センチュリー・ウーマン』とコインの裏表とまで言ってしまうのは……さすがに過言でした、謝罪します。
ベスト犬映画
☆『ノー・エスケープ』(ホナス・キュアロン監督)
『グリーン・ルーム』(ジェレミー・ソルニエ監督)
『ワイルド 私の中の獣』(ニコレッテ・クレビッツ監督)
『トッド・ソロンズの仔犬物語』(トッド・ソロンズ監督)
『パターソン』(ジム・ジャームッシュ監督)
『コクソン』(ナ・ホンジン監督)
戌年を前にして2017年もいい犬映画がそろいました。
とりわけ『ノー・エスケープ』における犬と人間の結びつきには心打たれるものがありましたね。愛犬家は涙なくして観られないとおもいます。犬の口に発煙弾打ち込んで殺すようなクソ野郎どもはみな死ぬべきなのです。われわれは犬を失ってしまえば、孤独になるしかないのですから。
ちなみにリストでは『ぼくのワンダフル・ライフ』がノミネーションされてませんが、まあ、そんなに悪い映画ではありません。しかし、犬映画としては、犬を人間の恋愛の道具として使うのを看過できませんね。*2
『マイティ・ソー:ラグナロク』のおおきいわんちゃんや『マイヤーウィッツ家』のワンポイント犬もなかなか乙でした。
ベスト姉映画部門
☆『ウィッチ』(姉弟)(ロバート・エガース監督)
『マイティ・ソー:ラグナロク』(姉弟)(タイカ・ワイティティ監督)
『マイヤーウィッツ家の人々[改訂版]』(姉弟)
『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー2』(姉妹)(ジェームズ・ガン監督)
『静かなる情熱』(姉妹)(テレンス・デイビーズ監督)
『プラネタリウム』(姉妹)(レベッカ・ズロトヴスキ監督)
特につけくわえることはない。実姉ではない疑似姉部門でも『20センチュリー・ウーマン』や『ザ・ベビーシッター』がありましたね。
私的ブレークスルー俳優
アダム・ドライバー(『ローガン・ラッキー』、『パターソン』、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』、『マイヤーウィッツ家の人々』)
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(『ゲットアウト』、『バリー・シール』)
アニヤ・テイラー・ジョイ(『ウィッチ』、『スプリット』)
エル・ファニング(『ネオンデーモン』、『20センチュリー
・ウーマン』、『夜に生きる』)
エズラ・ミラー(『ジャスティス・リーグ』、『ファンタスティック・ビースト』)
アダム・ドライバーはほんとにいいサブカルクソ野郎俳優へ成長しましたね。
注目しておきたいのは2018年公開作では『スリー・ビルボーズ』にも出演するケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。次世代のクズ野郎役俳優のホープとして着々と足場を固めております。
ドラマ、テレビアニメ
ドラマ十五選
☆『ハノーバー高校落書き事件簿』
『アメリカン・クライム・ストーリー:O・J・シンプソン事件』
『シリコン・バレー』S4
『アトランタ』S1
『マスター・オブ・ゼロ』S2
『ビッグ・リトル・ライズ』S1
『ウエスト・ワールド』S1
『アメリカン・ゴッズ』S1
『ナイト・オブ・キリング 失われた記憶』
『ファーゴ』S2
『ブラック・ミラー』S3
『伝説の映画監督 ハリウッドと第二次世界大戦』
『グッド・プレイス』S1&2
『マインド・ハンター』S1
ミステリドラマの当たり年。
特に『ハノーバー高校落書き事件簿』は探偵論ドラマとしても秀抜。法廷劇なら『アメリカン・クライム・ストーリー』と『ナイト・オブ・キリング』。SFやファンタジーにおけるミステリ的仕掛けなら『ウエスト・ワールド』(ノーラン弟らしい細工)や『グッド・プレイス』(ループものをまさかこう使うとは)。正攻法でありつつもフレッシュな新味を残した『マインド・ハンター』と『ビッグ・リトル・ライズ』にも乾杯を。
コメディでいったら『アトランタ』と『マスター・オブ・ゼロ』の年。ダイバーシティですね。『シリコンバレー』も安定のおもしろさ。
基本的に上記の十五作品はどれも傑作級に、ちょっと考えられないレベルでおもしろい。いよいよといいますか、もう完全にアメリカのコンテンツ業界はドラマにシフトしてしまったなあ。
特に意味もなく選外になってしまいましたが『十三の理由』や『ストレンジャー・シングス』S2や『またの名をグレイス』、『ミスター・ロボット』S3も当然最高ですよ。勢いの落ちた『ハウス・オブ・カード』のS5でさえ圧倒的なパフォーマンスだった。
ちなみに2017年配信開始じゃないですけど『TRUE DETECTIVE』や『ミルドレッド・ピアース』も今年観ました。
アニメ十選
『ボージャック・ホースマン』S4
『リック・アンド・モーティ』S3
『Just Because!』S1
『アニマルズ』S1
『ビッグ・マウス』S1
『少女終末旅行』S1
『宝石の国』S1
『フリップフラッパーズ』S1
『ネオ・ヨキオ』S1
『ラブ米』S1&2
国産のやつは原作好きなやつか、他人から教えられた作品しか観てないな……。『ラブ米』はほんとうに革命だとおもいました。
アメリカ産アニメのニューフェイス組は『ビッグ・マウス』のイカれっぷりと、『アニマルズ』の意外な端正さが心に残りました。
今年はもうちょっと逐次的に記録をつけていきたいですね。
よろしくお願いします。
今年は戌年なので犬映画の年になるとおもいます。
犬映画の年になるといいですね。
*1:https://twitter.com/nemanoc/status/860465739370700802
*2:だったら『101匹わんちゃん』もダメじゃん、と言われそうですがそれはそれなんだよ!!!