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今月買うべきかもしれない新刊プロスペクツ・10+20冊

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d.hatena.ne.jp


今月出る&出た本のうち、個人的な興味の範囲で面白そうなのを何冊か見繕ってみました。
『珍獣の医学』以外はまだ一冊も買ってません。


海外小説

1.ジョン・スラデック『ロデリック』河出書房新社ストレンジフィクション
 

 これはもう中身とか関係なしに買うでしょ。
 だって、ロデリックですよ、ストレンジフィクションですよ。
 死んだと思われていたあの<ストレンジフィクション>シリーズが、永遠に出ないと思われていたあの『ロデリック』が、
 ついに帰ってくるッッ!!! ついに出るッッ!!!!
 この奇跡が河出と柳下毅一郎からの最高のバレンタインプレゼントですね。

2.オルハン・パムク『黒い本』藤原書店

黒い本

黒い本

 『雪』『私の中は赤』と傑作しか書かないことで知られるパムクが今月いきなり二冊出る。
 紹介文的にはパムク・ミーツ・ジョイスみたいな感じらしい。「パムク最重要」とか書かれたらフカシだとしても買うでしょう。

あらすじ:
主人公のガーリップは、イスタンブールの弁護士である。幼なじみであり、伯父の娘であり、友人でもあり恋人でもあったリュヤーを妻とするが、ある冬の日、リュヤーは忽然と行方をくらます。ガーリップは、妻を捜しもとめてイスタンブールの街へ出かける。同じくいとこで新聞の人気コラムニストであるジェラールも姿を消すが、彼のコラムはその後も新聞に掲載され続ける。ガーリップが子どものころから愛読してきたその奇想天外なコラムが、彼の探索を方向付ける同行者となり、イスタンブールの裏通りや、歴史の片隅へと導いてゆく――。


3.ウンベルト・エーコプラハの墓地』東京創元社

知の巨人、ウンベルト・エーコ待望の最新刊。ナチスホロコーストを招いたと言われている、現在では「偽書」とされる『シオン賢者の議定書』。この文書をめぐる、文書偽造家にして稀代の美食家シモーネ・シモニーニの回想録の形をとった本作は、彼以外の登場人物のはほとんどが実在の人物という、19世紀ヨーロッパを舞台に繰り広げられる見事な悪漢小説(ピカレスクロマン)。祖父ゆずりのシモニーニの“ユダヤ人嫌い"が、彼自身の偽書作りの技によって具現化され、世界の歴史をつくりあげてゆく、そのおぞましいほど緊迫感溢れる物語は、現代の差別、レイシズムの発現の構造を映し出す鏡とも言えよう。

 またエーコが山風やるのか、といった感じ。シオン議定書がらみのピカレスクロマンなんて絶対面白いに決まってますやん。


4.リュドミラ・ウリツカヤ 『陽気なお葬式』新潮クレスト・ブックス

陽気なお葬式 (新潮クレスト・ブックス)

陽気なお葬式 (新潮クレスト・ブックス)

 極寒の地に生きる少女や女たちの辛さを淡々と描くウリツカヤの最新中編。このへんは作者買いですよね。

5.ジョイス・キャロル・オーツ 『邪眼 うまくいかない愛をめぐる4つの中篇』

邪眼: うまくいかない愛をめぐる4つの中篇

邪眼: うまくいかない愛をめぐる4つの中篇

 イノセンスをめぐるダーク奇想短篇書かせたら一級のアメリカ文学界の巨匠、JCオーツ。日本では『とうもろこし畑の乙女』以来二年半ぶりの翻訳。
 

6.ジョン・ヴァーリイ『さようなら、ロビンソン・クルーソー 〈八世界〉 全短編2』創元SF文庫

 ヴァーリイ再評価ブームは嬉しい限り。

7.殊能将之殊能将之 未発表短編集』講談社

殊能将之 未発表短篇集

殊能将之 未発表短篇集

 殊能将之は海外に住んでいるので海外枠に入れました。
 異能のミステリ作家殊能将之の未発表短編をみんなの頼れる講談社が絞りとってきてくれたぞ。感謝だ。

8.イーユン・リー『黄金の少年、エメラルドの少女』河出書房新社

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫)

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫)

 未知の名前なんだけれど(本自体は結構訳されてる)、今月出る『早稲田文学』にもウリツカヤなどと並んで短篇が紹介されるようで、ホットなヒトなのかなと。

9.岸本佐知子編訳 『楽しい夜』

楽しい夜

楽しい夜

 岸本佐知子のアンソロジーが出たらとるべき行動はただ一つだ。買うこと。

10.アルフレート・デーブリーン『たんぽぽ殺し』河出書房新社

たんぽぽ殺し

たんぽぽ殺し

 ウリ文句が「『ベルリン・アレクサンダー広場』の作者による〜」だったので「あれ? ファスビンダーじゃないの?」と思ってたら、原作あったんですね。「表現主義の先駆」となる「前衛」短編集らしいですが、1913年の「前衛」って言われてもね……。

その他ピックアップ 
オルハン・パムク『僕の違和感 上・下』早川書房
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『あまたの星、宝冠のごとく』ハヤカワSF文庫
スティーヴ・エリクソン『Xのアーチ』集英社


ノンフィクション

1.ナシア・ガミー『一流の狂気 心の病がリーダを強くする』日本評論社

一流の狂気 : 心の病がリーダを強くする

一流の狂気 : 心の病がリーダを強くする

 サブタイトルもヤバいけど、紹介文はもっとヤバい。

社会が平穏なときには「正常のリーダー」が活躍する。
しかし普通でない大きな危機に対しては、狂気の指導者が必要とされる。
実際に、偉大なリーダーの多くが精神の病を抱えていた。
だからこそ、彼らは非凡な決断と行動で人々を導き、歴史に残る偉業を成し遂げることができたのだ。

 できたのだ! と言われても……。
 チャーチルの「黒い犬」なんかは昔から有名だけれど、ポジティブな人物評論の切り口としては珍しい。
 今月のマスト。


2.スヴェトラーナ・アレシクエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』岩波現代文庫

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

 前回のノーベル文学賞受賞者のジャーナリストによるノンフィクション。
 第二次世界大戦ソ連のいわゆる「大祖国戦争」に従軍した女性たちの証言を聞き取ったもの。
 『ボタン穴の戦争』も同時出版。
 何? 元々出してた出版社はどうしたのかって?

 
3.ユーディット・シャランスキー『奇妙な孤島の物語 私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島』河出書房新社

奇妙な孤島の物語: 私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島

奇妙な孤島の物語: 私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島

島は天国だ。地獄でもある――古今東西、かくも風変わりなエピソードをもつ島々を史実に基づいて綴り、美しい地図とともに収録。「ドイツのもっとも美しい本」賞受賞。各国で絶賛を博した書。

 どこのサイトの紹介をのぞいてもこれしか書いてないので詳細はよくわからないのだけど、おそらくイラストレーション中心の民話集だと思われる。イラストを前面に押し出す本は話自体弱い傾向にある気がするので少し不安をもよおすものの、みてくれは大変よい。定価3000円オーバーだけど。
 

4.『文学賞受賞作品総覧 小説篇』日外アソシエーツ

 「直木賞のすべて」の人が喜びそう。必要なさそうでもあるけれど。

5.阿部和穂『危険ドラッグ大全』武蔵野大学出版

危険ドラッグ大全

危険ドラッグ大全

 いかにも話題性優先の、そこらへんのカストリ雑誌のムックみたいなタイトルだけれど、実はちゃんとした学者さんが大学出版社から出す本。

6.デイヴィッド・フィンケル『兵士は戦場で何を見たのか』

兵士は戦場で何を見たのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-7)

兵士は戦場で何を見たのか (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-7)

 去年出て話題になった『帰還兵はなぜ自殺するのか』のプレリュード的なノンフィクション、らしい。
 イラク戦争で心と身体に傷を負った兵士たちを取材する。

7.『人外娘の描き方と発想テクニック 身近な生物から発想しよう』玄光社

 ケモ系イラスト指南の本は海外では何冊か出ていて、たぶん日本にもあったような気がする。
 しかし、人外娘用のマニュアルは日本ならでは、ってかんじかしら。
 Zトン先生といい、ちょっとしたトレンドなのかね。

8.淺井カヨ『モダンガールのススメ』原書房

モダンガールのスヽメ

モダンガールのスヽメ

 いわゆるモボモガファッションとその生活スタイルの解説。
 浪漫ですよ。

9.ルーカ・クリッパほか『アウシュヴィッツの囚人写真家』河出書房新社

アウシュヴィッツの囚人写真家

アウシュヴィッツの囚人写真家

 今年のアカデミー賞外国語映画賞当確と目されている『サウルの息子』がらみかな。あの作品の元ネタになった本は収容所にいれられたユダヤ人による隠し撮りだったけど、こっちは「撮らされた」と書かれているからナチスの命令でアウシュヴィッツの光景を撮影した人の話っぽいです。

10.中尾政之『続々・失敗百選 「違和感」を拾えば重大事故は防げる-原発事故と“まさか”の失敗学』森北出版

続々・失敗百選

続々・失敗百選

 人間の不注意によって生じた数々のおもしろ……悲しい事故を集めた失敗事例集シリーズ第三弾。今回は福島第一原発事故が中心っぽいです。

11.萩野恭子『ロシアの保存食』WAVE出版

ロシアの保存食 (「美味しいロシア」シリーズ)

ロシアの保存食 (「美味しいロシア」シリーズ)

 孤高のロシア料理研究家、萩野恭子師が保存食に挑む。
 アマゾンレビューによれば、「ロシアの国民的発泡飲料「クワス」の収載は著者の本だけでしょう」でしょうことなので、ご家庭でクワスを楽しみたいロシア料理ファンは見逃せない。
 ……調べてみたらクワスって「アルコール度数は1‐2.5%」だそうなので、ご家庭で作ったらフツーに酒税法違反では……

12. 『東欧の想像力』松籟社

東欧の想像力

東欧の想像力

 奥彩子(ダニロ・キシュ)、西成彦スタニスワフ・レム)、沼野充義チェーホフ、レム、ナボコフ)という東欧文学研究会最強トリオが送る「20世紀以降の現代東欧文学の世界を一望できるガイドブック」。
 先月のリストでも見た記憶があるので、延期されてたのかな?

13.アレックス・メス―ディ『文化進化論 ダーウィン進化論は文化を説明できるか』NTT出版

文化進化論:ダーウィン進化論は文化を説明できるか

文化進化論:ダーウィン進化論は文化を説明できるか

近年、人間行動の進化に対する関心が高まっている。単に遺伝子の影響からのみ進化を説明するのではなく、人間の「文化」についての学習や継承の影響を科学的な手法で検証する分野が成長してきた。本書はこうした諸潮流を、「進化」を軸にして展望する。

 本気かよ、うさんくさいなあ、と思ってしまうのは優生学のトラウマでしょうか。いちおうちゃんとした訳書なのでそういうアレはイジェクトされてるんでしょうが。
HONZに書評がございます

  
14.ビルギット・アダム『性病の世界史』草思社文庫

文庫 性病の世界史 (草思社文庫)

文庫 性病の世界史 (草思社文庫)

 文庫落ち(元のタイトルは『王様も文豪もみな苦しんだ性病の世界史』)。TO。

15.氏家幹人『増補 大江戸死体考』平凡社ライブラリー

 増補文庫落ち
 江戸時代の処刑人(死刑場で罪人の首を落とす人)山田浅右衛門一族を中心に江戸時代の死体利用事情を解説。
 誰に対して売ればいいのかわからないのか、amazonの紹介文に投げやり気味に「刀剣女子必読!」と書いてある。
 良い評判をよく聞きます。

16.石川幹人『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』PHP選書

 オカルトバスター石川幹人教授が今度はEM菌、血液型占い、水素水といった大人気の疑似科学に立ち向かう。
 消されないかしら。
 

17.更科功『宇宙からいかにヒトは生まれたか』新潮選書

宇宙からいかにヒトは生まれたか: 偶然と必然の138億年史

宇宙からいかにヒトは生まれたか: 偶然と必然の138億年史

人間を中心とした地球史観を排し、宇宙創成のビッグバンから地球の誕生、そして生命が生まれ進化していく様を、生物と無生物の両方の歴史を織り交ぜながらコンパクトに描いた初めての試み。

 だそうで、素人にもやさしい正統派の生物史でしょうか。

 
18.田向健一『珍獣の医学』扶桑社

珍獣の医学 (扶桑社文庫)

珍獣の医学 (扶桑社文庫)

 獣医として数々のペット指南本や体験記をものにしている田向健一の最新作。亀やトカゲといった、よく考えたら素人にはどうやって手術したりしているのかよくわからない生き物についてやさしくレクチャーしてくれるらしい。
 もともと人気のある作家なのか、それともどこかで紹介されたのか、発売日まもないのにもう14個もamazonレビューがついている。
 田向健一は今月はもう一冊ちくまプリマー新書(ティーン層向けの新書レーベル)から『生き物と向き合う仕事』が出る。獣医の仕事の紹介だろう。

19.ジョナサン・ゴッドシャル『人はなぜ格闘に魅せられるのか 大学教師がリングに上がって考える』青土社

人はなぜ格闘に魅せられるのか――大学教授がリングに上がって考える

人はなぜ格闘に魅せられるのか――大学教授がリングに上がって考える

「男の闘い」が人類社会で果たしてきた
意外な役割とは何か?
教室を飛び出して総合格闘技の門を叩いた著者が、
迫真の体験記と膨大な科学的・歴史的知見から
驚きの真実を明らかにする!

 それは「教室を飛び出して総合格闘技の門を叩」かないと得られない真実だったのかどうかという疑問は湧くものの、内容は意外と真面目そう。
 『暴力の哲学』のビンカ―先生が推薦コメント出してた。
 

20.ジャイルズ・ミルトン『レーニン対イギリス秘密情報部』原書房

レーニン対イギリス秘密情報部

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 成立初期のソ連が革命をインドへ輸出しようとして、イギリス諜報部とやりあったという実話。へー。

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